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アフリカ・ルワンダ オフショア開発 / 進出支援コンサルティング
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アフリカで化学肥料を普及させるには【Pick-Up! アフリカ Vol. 224:2021年10月11日配信】

化学肥料の輸送問題を克服する

英題:Overcoming Fertiliser Logistic Challenges

記事リンク:Overcoming fertiliser logistic challenges – The Nation Newspaper (thenationonlineng.net)

内容と背景:

本日はアフリカでの化学肥料についての記事をご紹介します。

アフリカでは農業の生産性がまだまだ低いことから、人口爆発に伴う食糧需要の増加に供給が追い付いていないという現状があります。こちらの記事では、数十年にわたる過度な放牧や人口増加に伴う干ばつや砂漠化によって、ナイジェリアで農業の生産性を増加させることが困難であることが述べられています。このようにアフリカの農業は現在大きな困難に直面していますが、こうした状況を打開するために重要だと考えられているのが、化学肥料の普及です。

実際にアフリカでの化学肥料の効果について、こちらの記事ではケニアのトウモロコシ農家がトップドレシング肥料(成長期の穀物に使われる肥料)を適切に使用した場合、数か月のうちに生産量を48%、利益を36%増やすことができるという研究結果が示されており、こうした結果からアフリカでの化学肥料の活躍が期待されています。それにも関わらずアフリカでの化学肥料使用量は世界と比べても格段に低く、世界での使用量の平均が1ヘクタールあたり130kgですが、ナイジェリアの平均は13kgであることが今回の記事に示されています。

こうした状況を受けて政府は化学肥料生産企業に対して働きかけたことで、 OCP Fertilisers Nigeria, Dangote Group, Indorama and Notoreといった大手企業がナイジェリアでの化学肥料の普及に着手しています。その中でもOCP Fertilisers Nigeriaは毎年750000トンのアンモニア化学肥料と100万トンのリン酸肥料を製造できる大規模工場を2025年までに建設しようとしており、大幅に生産量を増やそうとしています。またDangoteの化学肥料のみでも、2020年から2030年にかけてその生産量が37パーセント増加すると推定されています。

先にあるような工場の増産により化学肥料の生産増加が見込まれていますが、それらの化学肥料が農家の手に届くためには輸送が必要です。しかしアフリカではこの輸送に大きなコストがかかってしまうため、化学肥料の普及が難しくなっています。

化学肥料の輸送コストが大きくなってしまう原因としては、製品輸送のためのインフラの整備の欠如が挙げられます。

化学肥料が農家に届くためには工場でそれらを積み込んだトラックが地上を行き来する必要があるために、それをサポートするようなインフラ設備が必要です。しかしアフリカの多くの地域ではそれが整備しきれていないために輸送が遅れたり無駄な人員を雇わなければならなかったりするので、輸送費が多くかかってしまいます。これによって化学肥料の市場での価格が上昇してしまうと、貧しい農家はそれを購入することができないうえに、購入して使用した場合でも利益率がそれほど上昇しません。

実際に世界銀行の調べによると、ナイジェリアでの輸送にかかるコストを2分の1にするだけで化学肥料によって利益を受けることができる土地の区画が40%も増加するため、輸送にかかるコストがどれほど高く、不合理であるかがわかります。そのため、インフラ整備によって価格を下げることができなければ、アフリカ農家における化学肥料の普及率が大きく増えることはないといえます。

またインフラの設備不良による問題は化学肥料の輸送のみに留まることはなく、食糧問題にも繋がっていきます。こちらの記事では、南アフリカでは自国の食糧生産量の34%を占める1000万トンもの食料が1年間で廃棄されていることについて書かれています。この問題にも様々な理由がありますが、インフラ設備の欠如が寄与している部分は大きいです。

食料は時間がたつと腐ってしまいます。したがって、インフラが整備されておらず物を運ぶのに時間がかかってしまうと製品を運べるエリアが限られてしまい、需要のある地域に製品を運ぶことができません。実際にこれほど多くの廃棄があるにも関わらず、南部アフリカ開発共同体加盟国では4760万人もの人が食料と栄養のアクセスに苦心していることを考慮すると、インフラ開発の重要性が見えてきます。

さらに、他の記事では化学肥料の普及に対するインフラ開発以外の問題として化学肥料が環境を破壊する可能性があることを述べています。

こちらの記事では化学肥料は食糧生産量を効率的に増加させることができるが、その使用は同時に水、空気、土壌といった環境にダメージを与えてしまうということが述べられています。また、こちらの記事では化学肥料によるアンモニアの排出が呼吸器系の疾患を悪化させるといわれており、最新の研究によってそれがコロナウイルスによる致死率を約15%も高めるという指摘があることを示しています。こうしたデメリットによって一部の環境活動家や農家たちは化学肥料の使用を推し進めることに反対しているという現状があります。こうした食糧生産と環境保護というジレンマが化学肥料の普及を推し進めきれない理由の一つだといえます。

今回の記事は化学肥料の普及率を上げるにはインフラ設備の発展が重要だという趣旨でしたが、フードロス問題と関連付けることでその食料分野における多面的な重要性が見えてきました。その一方、化学肥料の普及については今後食糧生産と環境保護の両立の方法を模索する必要があるという印象を受けました。この件について新しく情報が入りましたらアップデートしてお伝えしていきます。

関連・参考記事:

1.Land Degradation in Nigeria- Link

2.Overcoming Barriers to Fertilizer Use in Kenya – Link

3.Is Increasing Inorganic Fertilizer Use in Sub-Saharan Africa Profitable?

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