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南アフリカ:手話言語教育が進む?【Pick-Up! アフリカ Vol. 219:2021年9月28日配信】

記事:南アフリカは手話の使用を促進。しかし、まだギャップがある

South Africa has advanced the use of sign language. But there are still gaps

記事リンク:https://theconversation.com/south-africa-has-advanced-the-use-of-sign-language-but-there-are-still-gaps-168424

内容と背景:

本日は、以前ご紹介したこちらの記事(南アフリカ、公用語に手話の追加を検討【面白記事 Vol. 137: 2020年9月17日配信】)の続編に当たる内容について書かれた記事をピックアップしました。

昨年9月にご紹介した記事では、南アフリカの公用語に、南アフリカ手話の追加が検討されているという内容をご紹介しました。今回の記事によると、まだこの憲法改正の実施は行われていないものの、南アフリカ国内の各所で南アフリカ手話への理解が広がっているようです。

そこで、今回は南アフリカ国内でどのように手話という言語が広がりを見せているか、手話教育という分野にフォーカスを当てて書かれた記事をご紹介します。

手話を教育言語・カリキュラムに位置付けている南アフリカ

この記事によると、南アフリカ手話は学校での教育言語として公式に認められているということです。また、就学前から高校最終学年までの間に「手話言語」という科目が提供されているということです。これは、ろう児の識字能力と母国語による学習に対する理解を促し、学習上の権利を促進するために重要であるとこの記事の中では言及されています。

ちなみに、手話の公式な学校カリキュラムを持っている国はまだわずかで、南アフリカ・スウェーデン・ニュージーランド・オーストラリアのみであると書かれています。

第一言語で学ぶことの価値

この記事の中では、手話という第一言語を介してろう児童が学校教育を享受することについて、その重要性を強調しています。

初めに、ろう者と手話について少し話を掘り下げたいと思います。

手話は国連で正式に認められた言語で、地域により異なり、文法は日本語や英語などの音声言語とは異なった構成になっています。そのため、音声言語とは異なる言語の中で育ってきた人の中では、音声言語に則って構成されている文章の読み書きが苦手なケースが多くあります。

このような前提を踏まえて、南アフリカではどの子どもも学校で、第一言語のリテラシーを活かして学習ができるよう、学校教育言語の中に位置付けられたり、周りの子どもへの理解を促すよう手話言語を指導するカリキュラムが整えられたということが理解できます。

アフリカ地域の言語に関する内容については、以前、こちらの記事(40ヶ国語以上で翻訳される話題の映画:アフリカの少数言語と教育言語【Pick-Up! アフリカ Vol. 113:2021年2月22日配信】)でご紹介していますが、手話を教育言語の一つに位置付ける背景として、同様なことが述べられています。

現地語と教育言語の問題について、ユネスコの「グローバル教育モニタリングレポート2016」では、特に小学校レベルで母国語での教育が不可欠であることが示唆されています。知識のギャップを避け、子どもたちが学び、理解する速度を上げるために、少なくとも6年間母国語で教育を受けるべきであるということが推奨されているようです。

アフリカ大陸内の国々では、2000種類以上の言語が日常生活の中で話されていると言われています。南アフリカでは公用語を11種類(手話も追加予定で12種類になる予定)と定めているように、言語のダイバーシティー化が進んでいるという背景があり、手話言語の受け入れ方が比較的スムーズであったということが理解できます。

課題と展望

この記事では、新しいカリキュラムの導入やろうコミュニティの認知が進むにあたり、課題になることの一つは、資格のあるろう・難聴教員の不足と、質の高い手話通訳者の養成であるということが言及されています。

そこで、数々の大学が南アフリカ手話の養成講座を提供しているということが示されています。例えば、ウィット大学語学学校は手話通訳養成のための短期コースを提供し、フリーステート大学は、人文科学部で手話通訳養成講座を提供しています。

しかしこの記事では、2018年の大学受験時の手話受験を認めた学校は9校のみであったということについて懸念を示し、より多くの大学へ手話教育に関する啓蒙を進めていかないといけないということが示唆されていました。

また、あらゆる開発が進むにつれ、テレビやニュースの速報などで手話通訳を多く利用するケースが増えてきたということが書かれています。障害に関するワーキンググループは、ろう・難聴者がテレビ番組を試聴する時、話者を識別したり、効果音・音楽の説明を含むキャプションについて、その規制を更新することを求める活動を進めているということです。

南アフリカの公用語に手話が追加されるという発表から1年経ちましたが、いまだに公用語への追加のための憲法の改定にはまだ至っていないということでした。しかし、国内ではどんどん南アフリカ手話が教育現場やメディアなどにおいて、アクセスしやすいものになってきているということが理解できます。

今後の公用語化への動きや、それに伴う南アフリカ国内の手話やろう・難聴者をとりまく制度が今後どのように変わっていくのか期待しています。

南アフリカのこのような取り組みは、アフリカ大陸だけでなく、世界中にグッドプラクティスとして発信できるのものになるのではないかと感じています。

関連・参考記事:

  1. 2 Western Cape schools to offer Sign Language as matric subject – Link 
  2. South African Sign Language Wits University  Link
  3. Sign of the Times The Quality Assurance of the Teaching and Assessment of South African Sign Language – Link
  4. Why schools should teach young learners in home language – Link
  5. South African Sign Language Home Language : Grade 12 - Link

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