サバクトビバッタの大群発生は収束か。2022年現在の最新動向
訳 : アフリカの角でのサバクトビバッタの大量発生が収束。
英題:‘Desert locust upsurge in Horn of Africa ends: FAO’
記事リンク:https://www.independent.co.ug/desert-locust-upsurge-in-horn-of-africa-ends-fao/
こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。
今回ご紹介するのは、私たちpick-up!アフリカが過去記事でもたびたびお伝えしているアフリカ諸国でのサバクトビバッタに関する最新情報です。
引用元のニュースによると、FAOが3月2日にレポートを発表し、2020年初頭から約二年に渡ってアフリカ全土で大きな問題となっていたサバクトビバッタの大発生が収束に向かいつつあるということです。
本記事では引用元記事の情報に加え、今回のサバクトビバッタの大量発生を私たちの過去記事を元にご紹介したあと、今後の対策に向けた新たな技術についてご紹介します。
サバクトビバッタの大量発生
引用元の記事によると、2020年頭から東アフリカ全域で発生していたサバクトビバッタの大群がほとんど消滅したと、FAOが3月2日に発表したそうです。
FAOの発表によると、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ソマリア、ケニアで2月中サバクトビバッタの大群は確認されず、これで約2か月間発生が確認されなかったことになります。
こちらのFAOのレポートに記載されている情報を参照すると、今回大量発生が起こった地域での降雨量が少なく、それが原因で繁殖が抑制されている可能性が高いと述べられています。
一方で国連機関によると、エチオピア東部で規模の小さい未熟な成虫の集団が発生、南下しているのが確認されており、わずかではあるものの未だにバッタの大群が発生する可能性があると示唆されています。そのためFAOは、調査と警戒を引き続き継続する必要があることを述べています。
大発生の経緯
本記事では、現地のニュースと私たちの過去記事を元に、今回の約二年に渡るサバクトビバッタの大量発生について時系列で振り返っていきます。
2022年2月15日に国際赤十字連盟が発行したレポートによると、東アフリカにおける今回の一連のサバクトビバッタによる被害は2019年11月から発生し、その後広範囲に発展していったとされています。
同レポートによると、被害の大きさとしてはエチオピア、ソマリアでは過去25年間で最悪、ケニアでは過去70年間で最悪の被害となったと伝えられています。大群の移動経路としては、2020年初頭にケニア、エチオピア、ソマリア北東部から始まり、2月にはウガンダ、南スーダン、タンザニアに到達、5月にイエメンへと広まっていきました。また各地の群れで発生と個体の成長、産卵、羽化を繰り返したことで、数世代に渡って群れの繁殖が続いたことが記されています。
pick-up!アフリカでは、過去3回にわたってこのサバクトビバッタの大量発生について取り上げています。
1回目は、2020年7月17日に投稿したこちらの記事です。こちらの記事では、アフリカでのサバクトビバッタ被害による影響をご紹介するとともに、FAOによる支援について取り上げています。
2020年12月1日に投稿したこちらの記事では、雨季の影響によるサバクトビバッタの第二波の到来について報じています。
2021年3月16日に投稿したこちらの記事では、サバクトビバッタの統制活動の当時の最新情報と、その後に予想されていた発生の動向をまとめています。
その後の最新情報については、FAOのレポートによると2021年7月時点でエチオピア、ケニア、スーダン、ソマリア、イエメンで約3560万人が食料不安(IPCフェーズ3以上)に面していると記されています。
一方でこちらの別のFAOのレポートによると、FAOを中心として取り組まれた防除対策の効果により、約400万トンの穀物の損失回避、約3400万人の食糧安全保障の確保につながったと報じられています。
イノベーションによる今後の対策
今後、このようなサバクトビバッタの発生を防ぐためにはどのような対策が考えられるのでしょうか。
サバクトビバッタの大量発生の背景を説明したこちらの記事によると、彼らは湿原に生息する熱帯性の昆虫であり、異常気象により大雨・洪水が多発したことで、産卵に適した地域が広がったことが今回の大量発生の原因であると述べられています。
同記事内では、サバクトビバッタの発生を抑えるための方法についての見解が述べられています。記事によると、大群が発生する密度の個体数が集まる前に早期に発生を予測し、防除することが最も有効な手段であると述べている一方で、それぞれの個体の発生地は農村等からは離れており、簡単にはたどりつけないとも述べられています。
その一方で、今後の被害を最小限に防ぐための新技術の開発・研究も発展しました。
nature誌が発行したこちらのレポートによると、このようなサバクトビバッタの発生を予測するシステムの開発が世界各地で進められているようです。同レポートによると、ケニアの研究機関のEmily Kimathi氏らはFAOと合同でサバクトビバッタの発生地を予測する機械学習のアルゴリズムを開発したそうです。
研究内容によると、彼らはモーリタニア、モロッコ、サウジアラビアの9000以上のサバクトビバッタの発生記録を、降雨量、気温、土壌の水分量と紐づけることで、高い精度でのサバクトビバッタの群れの出現予測を成功させたそうです。
また同レポート内では別の研究内容についても言及されており、中国の研究チームがサバクトビバッタが群生相を形成する際に個体どうしを引き寄せるフェロモン、 4-vinylanisole (4VA)を出すことを解明しました。
これら二つの研究結果を組み合わせることにより、将来的にはサバクトビバッタの発生が予想される場所であらかじめ人工フェロモンを使用してバッタの個体を集め、大群となる前に駆除できると考えられるとレポートではまとめられています。
いかがでしたでしょうか。今回の大発生を受けて、また来年度以降もより一層サバクトビバッタへの警戒が強まることが予想されます。
今後もpick-up!アフリカでは、自然災害や農業に関連するニュースをいち早くお届けしていきます。
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参考記事:
1.Desert Locust situation update 2 March 2022 – Link
2.Locust upsurge in East and Horn of Africa – Final Report n° MDR60005 (15 February 2022) – Ethiopia | ReliefWeb – Link
3.Greater Horn of Africa and Yemen | Desert locust crisis appeal, January 2020–December 2021 – Link
4.Desert locust Upsurge and FAO Response | FAO – Link
5.Explainer: what’s behind the locust swarms damaging crops in southern Africa – Link
6.Use science to fight the locust plague – Link
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1.アフリカの農業セクターを脅かすバッタの大群と深刻な干ばつ【面白記事 Vol.
Continue reading サバクトビバッタの大群発生は収束か。2022年現在の最新動向【Pick-Up! アフリカ Vol.17:2022年3月18日配信】 at Pick-Up! アフリカ.