みなさま、こんばんは。いつもアフリカビジネスTodayをお読みいただきありがとうございます。
本日は、アフリカの高等教育におけるデジタル化について解説した記事を1つ、もう1つはデジタル化だけではカバーしきれない層に対し、教育機会を平等に提供するためにどのようなソリューションが考えられるのか、ということについて書かれた記事をご紹介します。
ぜひご感想お待ちしております!
記事1:「コロナ渦で目指す平等な教育:アフリカからの経験」
『Learning equity during the coronavirus: Experiences from Africa』
記事リンク:https://blogs.worldbank.org/education/learning-equity-during-coronavirus-experiences-africa
内容と背景:
新型コロナウイルス感染拡大防止のための休校措置として、教育業界へのICT導入が必須になる時代がきています。今回は、サブサハラアフリカの遠隔教育について現状と課題を見つめた記事をご紹介します。
この記事によると、ブルンジや中央アフリカ、チャド、エリトリア、マダガスカルなど、コロナウイルスによるパンデミック以前からも、インターネットへの接続率や携帯電話の所有率などにおいて低い数値を記録していた国々では、パンデミック以来上昇したと言われる遠隔授業への取り組みにおいても、充分な教育を提供できていないということが書かれています。
これらの国では遠隔教育による恩恵を受けているのは約4%の児童だけであるとし、さらにそのなかの大部分の児童がインターネット回線ではなく、テレビを介した方法で遠隔教育を受けているということでした。そこで、引き続き平等な教育の機会を提供するためには、テクノロジーに依存しない方法を導入する必要があるだろうということを言及しています。
そこで少し気になるポイントですが、以前ご紹介したこちらの記事(マダガスカル、コロナ特効薬から見えてくるアフリカ諸国の医療実情について。)はお読みいただけたでしょうか。この記事の中では、正式に認証されていない不確実な効能の薬草飲料であるにもかかわらず、新型コロナウイルスに効く特効薬として、アフリカのいくつかの国が輸入している。ということが問題視されていました。実は、今回の記事でも共通する国の名前がいくつか散見でき、極度の貧困状況にある国々の社会基盤形成における課題やその困難性が、教育分野とも相互に作用していることが理解できるのではないかと感じました。
またこの記事では、閉鎖中に学校と生徒を常につないでおくことが非常に重要性であるということを述べています。学校が長期間閉鎖された場合、教育機会の損失以外にも、児童労働・性的搾取・武装グループによる徴用の危険などが考えられるほか、学校が再開したときに生徒が戻ってこないというリスクも高くなるという様々な連鎖が起こることが想定されるためです。
そういった国々では、遠隔教育を提供する際に課題が山積しているように思われますが、前述した地域などの国々ではコンピューターやテレビとは対照的に、ラジオや携帯電話へのアクセスは比較的高く、これらの機器を活用することで、より多くの学習者に到達する低コストのテクノロジーソリューションを提供できる可能性があるといいます。
実際に、アフリカの大学で講師をしている方から、最近、講義では全員の学生が参加できるWhatsAappを利用しているというお話を伺いました。積極的に学生もチャット機能を通して発言をしているようで、手ごたえも良い。というようにおっしゃっていました。インターネットの普及ももちろん拡がってきてはいますが、末端まで届くまでには時間を要するとも言われています。それまでに今使えるソリューションを積極的に使うという方法によって、平等な教育を提供することこそが、現場では優先され、求められているようです。
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記事2:「アフリカ大陸におけるポストコロナの高等教育」
『What will higher education in Africa look like after COVID-19?』
記事リンク:https://www.weforum.org/agenda/2020/06/higher-education-africa-covid19-coronavirus-digital-online/
内容と背景:
上の記事に続きこちらでも教育分野からの話題をお届けします。
先の記事では、全体的な課題感や、インターネットやコンピューター、テレビなどへのアクセス率が低い国々での遠隔教育実現の代替案として、携帯電話の普及率を見方にした、WhatsAppなどのメッセージツールや、一般庶民により活用されているラジオとを組み合わせて教育を届けるという解決策が紹介されていました。
こちらの記事では、大学のパンデミック後の姿に焦点を当て、「アフリカ大陸におけるポストコロナの高等教育」と題し、コロナウイルスへの対応措置として進む高等教育のデジタル化によって、アフリカの大学教育がどのような教育の姿になるのかということを紹介しています。
今後コロナウイルスの長期化、および新たな想定外の混乱の発生が日常生活の一部となる可能性もある中、未来を担う若者を育てる教育分野のデジタル化という変革は必須になると考えられます。
実際にアフリカ大陸ではすでにエジプト、ガーナ、南アフリカ、ルワンダにある大学が、コロナウイルスへの対応措置として無料パッケージを提供しているテレコム企業と提携し、プログラムの一部をオンラインプラットフォームに移行させています。さらにこれらの大学には、一部の学生に対してデータパッケージとラップトップの利用を可能にしている大学もあります。
さて、そこでこちらの記事では改めて、高等教育デジタル化がもたらした新たな大学教育の姿を紹介させていただきます。
まず一点目がデジタル化により、「混合型およびモジュール型の学習が可能になる」ということです。これまで大学側だけで準備してきた教材も、今後は、オンラインから関連教材を引っ張ってきて、それを大学独自で準備している教材と組み合わせることで、教材のレベルを補完し合うことができるとしています。これにより、対面式のセッションへの参加費用を賄うことができなかった学生も、オンラインにて質の高いプログラムのモジュールにより少ないコストでアクセスできるようになります。
二点目は「カスタマイズされた学習が体験できるようになる」ということです。学習管理システムからのデータ駆動型の提案を通じたカリキュラムの開発により、学生は自身のキャリア志向に合うカスタマイズされた学習の機会を得られるようになります。インターネットを通じて世界各国の大学の授業を受けることができる新たな学習方法とも言われているMOOC (Massive Open Online) の一部では、以前受講したコースとそのパフォーマンスに応じて、学生が次にどのクラスを取るべきかというようなことを提案できるサービスを設けているところもあります。
三点目は「教育者の高品質化が見込める」ということです。教育業界のデジタル化進展により学習者のみならず教育者側もその恩恵を受けられるようになります。教育者らはオンラインの専門学習コミュニティに参加してキャリアトレーニングを行ったり、トレンドを吸収し教育水準の高品質化を実現させることができるようになるためです。
記事によると、アフリカには推定1650もの高等教育機関が存在するものの、関連する年齢層のアクセスは現在5%にしか満たないという厳しい現状があるようです。また、ユネスコによるとサハラ以南アフリカの学生の89%が家庭用コンピューターにアクセスできず、82%はインターネットにアクセスできない状態であるという現状から、今回のコロナウイルスをきっかけにオンライン化が進んではいるものの、引き続きその恩恵を享受することができない状態にある学生が多くいると考えられます。
アフリカ特有の課題をきちんと分析し、ソフト・ハード両方の面から課題解決につながるソリューションを提供することで、すべての人々がより安価に、より利用しやすく教育にアクセスできるようになることを願ってやみません。