みなさま、こんばんは!
さて、金曜日は農業セクターからの話題をご紹介いたします。
本日は、アフリカの農業セクターにおいて協同組合がどのような役割を果たしているのか、その形態の歴史的変遷を含め非常に詳しく解説している記事をご紹介しています。
1記事のみのご紹介ですが、非常に読み応えのある内容となりましたので、奮ってお読みください。
明日もお楽しみに!
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記事:「アフリカの農業セクターで協同組合の果たす重要な役割」
「The Emerging Role of Cooperatives in African Agriculture」
記事リンク:
https://www.agweb.com/blog/emerging-role-cooperatives-african-agriculture
内容と背景:
さて、本日はアフリカの農業セクターにおける協同組合の役割に関して、こちらの記事をもとにその歴史的背景から詳しくご紹介いたします。
現在小規模農家が大多数を占めるアフリカでは、購入価格を低く抑えようとする仲買人に対して、農民が力を合わせ市場力を生み出すために協同組合を活用している例は少なくありません。しかしこちらの記事によると、協同組合の形は歴史的に多くの変遷を繰り返してきており、常にそのような役割を果たしてきたわけではないようです。
もともと協同組合は主に1950年代と1960年代にアフリカ諸国が独立を果たした際に政府により引き継がれたヨーロッパによる植民地統治構造の一部でした。そしてこれらの協同組合は市場へのアクセスと政府による信用を管理していたため、多くの農民が昔から参加していたのです。
一方で、特にアメリカやデンマークなどの国際協力機関は政府を通した協同組合の取り組みへの資金援助を好む傾向にあり、結果としてこれが政府機関のコントロールできる資金の増大に繋がっていきました。これらの組織は徐々に実際の協同組合員である農民を指導的立場から除外するようになり、特定の国の政党の支持者雇用の源泉となっていったのです。
さらに、協同組合が政府の課す食品価格管理の制約を受けるようになったこともあり、上記の理由により農民の影響力が低下するだけでなく、組織の運営方法に対する彼らの賛同や参加意欲までもが低下していきました。
1990年代半ばになると構造改革が起こり、農業協同組合の多くは政府の統制から明確に独立するようになり、市場で独占的地位を占めるようなことはなくなっていきました。しかし、ここで政府による直接の監督がなくなったことで協同組合管理の倫理基準は緩くなり、一部の国では組合員間での腐敗した行動や利益相反が蔓延するようになっていきました。結果として2000年代半ばまでに多くの組織が収益損失のために消失し、一部の地域では協同組合という言葉そのものが否定されるようになっていったのです。
その後ここ数十年にわたり、協同組合は財政的に繁栄するために新たな構造的枠組みを取り入れてきました。例えば、ケニア、ナイジェリア、ニジェール、ルワンダ、カーボベルデなど多くの国では貯蓄信用組合(SACCO)と呼ばれる新たな構造を備える組織が同セクター最大の協同組合となっています。
ここまでアフリカの農業セクターにおける協同組合の形態の歴史的変遷をご紹介してきましたが、ここからは実際に協同組合を通じて売買される商品シェアに注目していきたいと思います。
国際熱帯農業センター(CIAT)が2017年に発行した政策概要によるとアフリカにおける市場向け余剰のうちわずか5%未満が協同組合を通じて販売されているという見積もりが出ているように、実は協同組合によって販売される商品シェアは未だ低い値に止まっているのが現状です。その原因としては多くの農家が素早い収益回収を実現させるために協同組合以外の販売店を通じて商品の一部を販売する傾向があることが挙げられます。これは現在個々の協同組合の効果を損なう「サイドセリング」として知られている手法です。
では具体的にどのような商品が協同組合を通じて販売されているのでしょうか。こちらの記事によると、アフリカで成功している協同組合の多くは紅茶やコーヒーなど高価値かつニッチな商品の販売に特化しているようです。また近年では、これらの他に酪農協同組合の数も増えてきているようです。これは、牛乳など生鮮食品を安全に保管および処理するための設備を整備するために、農家が団結する必要性を認識していることの現れとも言えます。
こうした現状の中、より多くの商品分野にて協同組合を活用した持続可能な生産および取引を促進させようと、協同組合同士で連携し合う動きも活発になってきています。
その代表としては、2018年5月にモザンビークのマプトにてアフリカ諸国の多数の協同組合の代表が集まった際に、アフリカの農業協同組合が協働するきっかけをつくることを目的に設立されたアライアンスアフリカ農業協同組合(AAACO)が挙げられます。欧連合(EU)が共同出資したこの取り組みでは、農民が利用する農業慣行のガバナンスと持続可能性を改善することを目的とした5年間の行動計画が採択され、アフリカ諸国の約80%がこれらの初期の取り組みに参加しました。
ここまで長々とご説明してきましたが、このように他地域と比べて市場力を生み出したいと考える小規模農家の占める割合が非常に大きいアフリカでは、協同組合の形態は多くの変遷を辿りながらも、その成す役割は昔から現在まで変わらず非常に大きいと考えられます。
こちらの記事では協同組合に特化してご紹介してきましたが、関連記事の1記事目には食料の安全保障と農業における高い収益性を実現させるには民間部門の貢献が不可欠であり、効率的なアグリビジネスのバリューチェーンを構築させるという意味で、民間部門でのアライアンスが重要となると述べている記事をのせました。今回取り扱った記事と比べ、よりマクロ的な視点から農業セクターを捉えている記事ですので、ご関心のある方はぜひ関連記事もあわせてお読みください。
関連記事:
- 「Why There Is A Need For Private Sector Alliance in Africa’s Agriculture」–Link
- 「Alliance Africa Agricultural Cooperative organisation (AAACO)」–Link
- 「African cooperatives and the financial crisis」–Link
*この記事は弊社が主体となって運営する、日本・ルワンダビジネスコミュニティ(https://www.japan-rwanda.biz)に投稿した記事と同様の内容となります。