みなさん、こんばんは。いつもアフリカ・ビジネスTodayをご覧いただきありがとうございます。
先週のアフリカエンタメウィークはお楽しみいただけたでしょうか。
今週からは通常通り、アフリカのニュースをカテゴリごとにピックアップして毎日お届けいたします。
月曜日の本日は、教育分野に関する話題です。
本日は国の経済発展の基盤となる人材分野の育成に関する話題を2つピックアップしました。
一つはナイジェリアから人的資本流出に関する警笛を鳴らす記事に関して、もう一つは南アフリカの職業訓練校教師のトレーニングに関するプロジェクトのご紹介です。
今週も毎日の更新、ぜひお楽しみいただければ幸いです。
記事1:アフリカ、人的資本の流出における課題
Africa, stop ruining your future by exporting needed human capital!
内容と背景:
本日ははじめに、ナイジェリアの人的資本流出について言及されたこちらの記事をご紹介します。
優秀な人材がどんどん他の国に移動してしまうことを「人的資本流出」や「頭脳流出」などという言い方で表されています。今後の国の発展を支える知識人の海外への流出はアフリカをはじめとした開発途上国の経済に負の影響を与えてしまいかねないといいます。
この記事では主にその「人的資本流出」についての問題について言及し、アフリカの国々は優秀な人材を海外にどんどん排出するべきではないということについて示唆しています。
この記事によると、世界銀行が発表した2018年のナイジェリアの人的資本指数(Human Capital Index=HCI)は157か国中152位にランク付けされました。このHCIは経済成長における国の利益と、健康と教育への投資による人的資本の成果をランク付けしたものになっています。HCIは、生存率、教育の量と質、健康状態に基づく複合的な指標であり、これらすべてが生産的な労働力につながります。それは、完全な教育と完全な健康を基準として次世代の労働者の生産性を表すものになっています。
依然としてアフリカ大陸のHCIパフォーマンスは他国と比べて低く、アフリカ大陸のどの国も上位50にランクインしている国はありません。アフリカの最大の経済規模を誇る南アフリカは126位、2番目に大きい経済規模のナイジェリアが152位です。東アフリカの経済大国であるケニアは94位、北アフリカのエジプトは104位です。
しかし、このようにアフリカのパフォーマンスが依然として低いにも関わらず、有能な人材がアメリカなどをはじめとした先進国にどんどん流出してしまっていることが問題視されています。
ナイジェリアから出ていった移民は、特にアメリカの労働市場に大きな影響を与えているようです。高度な学位を取得している割合が高いことや、民間企業のCEOとしての役割を担うなどアメリカの人的資本の要素に大きく貢献している移民が多いと書かれています。
先進国では教育や医療面においてナイジェリアよりも高度なものを享受できるとして、とくに優秀な人々がそういった保障を求めて、先進国に渡っているといいます。特に医療面においては、ナイジェリアよりも高度なものが受けられるため、ナイジェリアの大統領においても、医療的ケア受けるために、ヨーロッパに通算5回以上渡っているそうです。
この記事では、アフリカは、その人的資本を放棄することによって、独自の開発を妨害していると表現しています。今後のアフリカの発展を担う優秀な人材を国外に流出してしまっていることから、いつまでもアフリカ大陸は貧困状態が続いているということを問題視しています。
確かに大統領自身が医療的ケアを受けるためにヨーロッパに渡航していれば、その国の医療レベルはいつまでたっても高い水準を目指すことは難しいのかもしれません。
一方でこのような課題感をいち早く解決しているアフリカの国もあります。
世界経済フォーラム(WEF)のグローバル競争力レポート2014-2015では、ルワンダが頭脳流出率が最も低いアフリカの国としてランクインしています。関連する記事によると、ルワンダは現在アフリカのICTセクターのハブとなるプレゼンスを発揮し、海外からも多くの投資を集めているため、このような人的資本の流出を抑えて優秀な人材を国で確保することができているという見解がありました。
優秀な人材を国内で活用できるICT、テックセクターの発展が一つの要因となっていることもあり、ルワンダはアフリカの奇跡と呼ばれるほどの経済発展を遂げているのかもしれません。
関連記事:
- Human capital index (HCI) (scale 0-1) – Country Ranking - Link
- Africa’s Brain Drain: Why Rwanda Is Winning –Link
- AFRICA : Only the Continent Can Put a Stop to Drain Brain – Link
記事2:ドイツの開発銀行がTVET講師養成センターを後援
German development bank sponsors TVET lecturer training centre
内容と背景:
お次はTVET(=Technical and Vocational Education and Training:技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練)セクターに関する話題をご紹介します。
TVETセクターはアフリカの開発において重要な人的資源・教育開発の位置付けとして機能しています。国の発展には産業人材の育成が必要不可欠であるとして、2015年、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)は、加盟国に対しTVET勧告を出しています。
その中でも特に、アフリカへのTVET支援に関しては1960年頃から各国が積極的に行っており、国際機関ではUNESCOは教育の視点から、ILOは労働から、世銀はマクロ経済からと、それぞれ異なるアプローチでアフリカへのTVETセクターの支援を行ってきたという歴史があります。日本でもJICAや外務省の無償資金協力を通して、1970年代頃から本格的な支援が行われてきました。
今回の記事ではドイツの開発銀行の取り組みについて書かれている記事をご紹介します。
ドイツを本拠とするKfW開発銀行は、南アフリカの高等教育訓練省(DHET)と、エクルレニイーストカレッジに技術および職業教育および訓練(TVET)講師のための現職スキル開発センターを設立する契約を締結しました。
この協定は、ドイツと南アフリカ間の二国間開発協力の一部であり、DHETにR136-million、または€8.25-millionの助成金を提供するものです。
また、このプロジェクトは、TVET講師資格分野におけるDHETによる現在の政策改革プロセスに組み込まれ、資格要件への取り組みと継続的な専門能力開発のためのフレームワークの開発に役立てられるということです。
この記事の中で、南アフリカのKfW局長は、このプロジェクトに関して、南アフリカの政府が大学の講師による教育の質を向上させ、若者との雇用機会を増やすために産業界との連携を強化することを支援することを楽しみにしていると述べています。
アフリカではTVETの技術訓練教育を提供する学校や施設はあっても、そこに従事する教師の数の少なさやその質の低さが度々問題視されることがあります。
そこで今回のプロジェクトのように、官民連携の形で人材育成支援に取り組むプロジェクトはとても貴重であり、現職の講師をトレーニングすることで、講師自身にとってもより実質的で実用的な学びの機会になるのではないかと感じました。
関連記事:
- アフリカにおける TVET 支援の妥当性と支援環境 – Link
- 東アフリカ地域、職業訓練教育に関する話題【面白記事 Vol.116: 2020年8月24日配信】- Link
- 面白記事 v.23(投稿:2020年4月27日) – Link