訳 : OCP、EUアフリカビジネスフォーラムにおいて、専門家と議論を交わす
英題:‘OCP joins experts to discuss agriculture at EU-Africa Business Forum’
記事リンク:https://african.business/2021/11/agribusiness-manufacturing/ocp-joins-experts-to-discuss-agriculture-at-eu-africa-business-forum/
こんばんは!いつもPick-up!アフリカをご覧くださり、ありがとうございます。
今回ご紹介する記事は、今年の11月28,29日開催された第4回EUアフリカビジネスサミットについてのニュースです。
ヨーロッパとアフリカ間のつながりを政治、経済などあらゆる面で強化し、社会課題の解決を目的として開催されているこの会議ですが、今回お届けするニュースではその中でも特に農業分野への投資の強化、それによって得られる効果などについてピックアップされていました。
EUアフリカビジネスサミットとは?
今回のニュースの中心であるEUアフリカビジネスサミットとは、いったいどのようなモノなのでしょうか。この会議はEuropean Business Summitsという団体が主催しており、政策レベルと民間レベルの両方でヨーロッパとアフリカから関係者を招き、2018年の第一回から年に一度モロッコのマラケシュで開催されています。
2021年11月28、29日に第四回目となるこのEUアフリカサミットが、モロッコの首都マラケシュで開催されました。この会議の掲げるミッションはEUとアフリカ間の貿易と投資の促進、円滑化であり、政治、経済、社会問題、環境問題の四つのテーマについて議論しています。
特に今回は、新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かいつつある中で、二大陸間の経済活動を再開させ、より活発化させるためにも大切な機会となりました。
今回の会議では以下の4つの主要テーマが設定されており、
1)アフリカのバリューチェーン
2)デジタルトランスフォーメーション
3)ヘルスケアイノベーション
4)グリーントランジション
について、ビジネス関連の人たちや、各テーマの専門家、政治家など様々なセクターの人々が議論をかわしました。(1,2)
農業分野での連携の強化
そんな中でも、特に大きく取り上げられているのが、農業分野のパネルディスカッションについてです。今回のサミットでは、「農業とアグリビジネス:公平な農村開発のための、より強い農業」がディスカッションテーマとなっており、EUの元農業部門の理事や、世界最大級の肥料会社OCPグループの会長などが招かれ、農業に関連したEUとアフリカ諸国の今後の連携、投資について議論が行われました。
アフリカは世界中に現在残存している農地約6億haのうちのほとんどを保有しており、されにそのうちの65%が未開拓の農地であると言います。またアフリカに住む人々の全人口における60%は収入と生活を農業に依存しており、このことから、農業分野における今後の成長がアフリカの発展を左右していると言えます。
記事の内容を抜粋すると、今回の会議ではアフリカ農業への投資と、アフリカの農産物のEUへの輸出を強化することで、両者の産業の結びつきを深め、アフリカの農業分野及び経済の発展に貢献するという目的があります。
EUにはフランスをはじめ農業大国と呼ばれる国々が多くあり、加工品や肉牛、穀物などの生産が盛んであるほか、大豆やサトウキビ、パーム油等の食料加工品の原材料の輸入も 非常に多いです。
そのためEU圏内各国の食品加工産業では、アフリカから輸入された農産物を原料としているものも多く、EUにとってアフリカは農業分野での最大の相手国であるといえます。
このことからも、EUは農業分野でのアフリカとの連携の強化は、双方の強みを活かした貿易戦略であると言えます。
AfCFTAを見据えた農業分野への投資
そんな今回のサミットによって導かれた大きな結論のひとつが、アフリカの農業への投資によって、アフリカに残る耕作地での持続可能な農業の推進と、食料生産量の増加を行うことです。
さらに本サミットで合意に至った点として、小規模農家に焦点を当て、彼らをサポートする投資を行うことへの決定が成されました。
このような農業分野への支援は、現在整備が進められているAfCFTAによるアフリカ圏内の貿易の活発化を見据えています。
The African Union Commission (AUC) の局長であるGodfred Bahiigwa氏は、アフリカの農家が直面している大きな問題のひとつとして、ポスト・ハーベストロスの発生率の高さを挙げています。今後AfCFTAがうまく機能し、アフリカ大陸内の貿易が活発化することによって、食料の流通がスムーズに行われ、輸送コストの削減、それによる農家の収入の向上が見込まれます。
加えて、食料の入手が容易になることで、栄養の質の向上や食品の安全性を高めることにもつながると言います。(5,6,10)
EUとアフリカの関係性
ところで、このようなサミットが開始された背景には、EU-アフリカ間のどのような関係性があるのでしょうか。
EUはアフリカにとって、最大の貿易相手国のひとつです。2020年のアフリカへの外国直接投資額(FDI)のデータを参照すると、EU全体では2220億ユーロであり、アメリカの420億ユーロ、中国の38億ユーロと比較しても、遜色がないことが分かります。(12)
実際にこちらの貿易額のデータを参照すると、アフリカ全域での輸出額の総額が約172億ドルのうち、およそ1/3である約65億ドルがヨーロッパに輸出されています。(3)
EUのHPを見ると、EUアフリカビジネスサミットが開始された2018年に、EUは持続可能な投資と雇用のためのアフリカ・ヨーロッパ連合に関する文書を発表しており、その中にはEUとAU(アフリカ連語)間の協力・連携を通して、アフリカの農村部の持続可能な開発への支援の強化を盛り込んでいます。
またこの協定を基に、農業やアグリビジネス、貿易の専門家ら11人によるアフリカの農村部の開発に貢献するためのアドバイザー機関、アフリカ農村部タスクフォース(TRFA)が設立され、活動しています。(4)
EUの狙いとは
一方でこのようなEUのアフリカとの連携の再構築の裏には、中国の急速なアフリカ市場への進出に対抗したいというEU側の思惑もあると言われています。
以前このサイトでもご紹介したように、現在中国が急速にアフリカ市場への参入を進めています。今年度は新型コロナウイルスの影響により、世界規模で経済活動が滞ったにもかかわらず、中国市場のアフリカからの輸入額は増加しており、2021年1月から7月までの輸入額は1年前の同時期よりも40.5%の増加率を見せています。
さらに中国はアフリカのインフラ整備事業にも力を入れており、アフリカ圏内の貿易環境の改善に貢献しています。(7,8)
こちらのニュースを見ると、EUは発展途上国のインフラ整備向上のための戦略として、3000億ユーロを投資する計画を明らかにしています。この計画では、EUが優先的に取り組んでいる課題であるグリーンエネルギーやデジタル技術関連を中心に、2027年度までに年間約600億ユーロを投じる計画であると発表されています。
それに対し、中国が着手しているアフリカの開発計画は2027年までに約1.2兆ユーロを投じるプロジェクトであり、金額的な規模では及ばないながらも、中国のアフリカでの影響力の拡大への対抗策として打ち出されています。(9)
先述した様に、ヨーロッパとアフリカ間で強い関係性のあった農業分野においても同様に、中国を含むほかの地域へのシェアの分散が進んでいます。
こちらのレポートによると、アフリカの農産物輸出のシェアのトップは未だにヨーロッパであり、輸出額そのものは増加し続けているものの、その割合は2005-2007年の45%から、2016-2018年には36%へと減少しています。(11)
今回のEUアフリカビジネスサミットをうけて、両大陸間の関係性はどのような変化を見せるのでしょうか。今後の動きにも、注目が集まりそうです。
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