題:SDGs8:南アで第5回児童労働撤廃国際会議が開催|アフリカ農業における児童労働問題の解決に向けて
訳 : 国連の専門家が、農業分野における児童労働の深刻な増加に対処するための行動を要請。
英題:‘UN experts urge action to address alarming increase of child labour in agriculture sector’
記事リンク:https://www.ohchr.org/en/press-releases/2022/05/un-experts-urge-action-address-alarming-increase-child-labour-agriculture
こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。
本日ご紹介するニュースは、先月5月15-20日に南アフリカ・ダーバンで開催された「第5回児童労働撤廃国際会議」についてです。
国際労働機関(ILO)によると、世界には未だ約1億6000万人の子供たちが児童労働に従事していると見られており、またその多くがサブサハラアフリカ地域の子供たちであると推定されています。
アフリカ、そして世界から児童労働を撲滅するために、どのような取り組みが行われているのでしょうか。今回の会議を通して、児童労働撲滅のためにどのような取り決めがなされたのでしょうか。
国際会議の内容を中心に、アフリカにおける児童労働の現状やそれらを撲滅するための動きについてご紹介いたします。
内容と背景:
引用元の記事によると、先月5月15-20日に南アフリカ・ダーバンで「第5回児童労働撤廃国際会議」が開催されました。
こちらの記事によると、今回の国際会議には世界各国の政府関係者や国連職員など1000人以上が出席し、7000人以上がオンラインで参加しました。
会議の最終日には児童労働撤廃を目指し、確実に実行するための行動指針として、「ダーバン行動要請」が出席者の同意の元に採択されました。
世界とアフリカの児童労働の現状
今回のテーマである児童労働の撤廃に関してはSDGs8にも記載されている、世界規模で協力して解決すべき課題です。
国連が作成したSDGsのHPによると、2025年までに全ての児童労働をなくすこと、2030年までに全ての強制労働をなくすことが目標として掲げられています。(SDGs8については、我々の過去記事で詳細に取り上げています。記事リンクはこちら)
児童労働は子供たちから教育を受ける機会を奪うほか、長時間労働や危険な作業に従事することを強いられるケースが多く存在します。2020年にILOが発行したレポートによると、農業、工業、サービス業において、世界で約420万人の子供たちが危険な業務に従事しているほか、サブサハラアフリカで児童労働に従事している子供たちの28.1%が学校に通うことができていないことが示されています。
しかしながら、2030年の目標の年まで残りわずかとなった現時点で、残念ながら世界では未だに多くの児童労働が行われています。
先ほどのILOのレポートによると、世界の子供たちの約10人に1人にあたる約1億6000万人の子供たちが児童労働に従事しています。
さらに悪いことに、1997年にスウェーデンのオスロで「第1回児童労働撤廃国際会議」が開催されて以降減少し続けていた世界の児童労働の数字が、2016年から2020年の間に約800万人増加したことが明らかになっており、20年ぶりに世界の児童労働者の数字が増加する事態となってしまいました。
ではアフリカにおける児童労働の現状は、どのようになっているのでしょうか。
こちらの記事ではアフリカ大陸における深刻な児童労働の多さについて特集されており、ILOの調査によると、世界の児童労働者数約1億6000万人のうち、約7200万人がサブサハラアフリカの子供たちであると推定されています。同記事によると、この数字は同地域の子供たちの約5人に1人の割合であるということです。
農業における深刻な児童労働
引用元の記事ではさらに、農業における児童労働の深刻さについて取り上げられています。
国連食糧農業機関(FAO)が発行しているこちらの記事によると、世界で行われている児童労働において農業部門が占める割合は圧倒的に大きく、世界の児童労働の約70%、約1億1200万人の子供たちが従事していると見られています。
アフリカの農業における児童労働は世界の水準よりもより一層深刻であり、ILOが発行したレポートによると、児童労働の81.5%が農業分野であると記されています。これは全世界の平均値である70%を大きく上回っており、深刻な問題として挙げられています。
この割合が高い背景には、アフリカの多くの国において第一次産業が就業人口の多くが従事する主要産業であること、小規模農家が多く、生産者の多くが貧困状態にあることから、安価な労働力としての児童労働が行われてしまっていることなどが考えられています。
これらのアフリカの農業における小規模農家の現状等については、私たちの過去記事で取り上げているので、そちらをご参照ください。(参考記事1、2)
また私たちの過去記事では、このようなアフリカの農業における児童労働の実態として、カカオの生産現場における児童労働の問題について取り上げています。
こちらの記事によると、2019年の時点で世界で約159万人の子供たちがカカオの生産現場で児童労働を行っていることが記されており、こちらの記事では、カカオの生産現場における児童労を助長している要因として、先進各国の大手チョコレート会社による不当に低い価格での取引が行われているということが述べられています。
またアフリカに多く埋蔵されている鉱山資源の採掘現場も、農業と同様に児童労働の温床となっている事例がしばしば見受けられます。
こちらの過去記事では、コンゴ民主共和国のコバルト採掘場において児童労働が行われているという事実と、そのような問題に対する世界の大企業の動きについてまとめています。
こちらの記事も、ぜひご参照ください。
児童労働撲滅のためのダーバン行動要請
今回行われた第5回児童労働撤廃国際会議では、最終日に農業を中心として児童労働を世界から撤廃するための行動指針である「ダーバン行動要請」が宣言されました。
ILOの日本語HPによると、ダーバン行動宣言は以下の主な6つの分野について行動指針を定めています。
1.最悪の形態の児童労働の撲滅を優先的に進めるため、複数のステークホルダーによる児童労働撤廃の取り組みを加速させ、成人と就労年齢以上の若者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現させる
2.農業における児童労働を撲滅する
3.最悪の形態の児童労働、強制労働、現代の奴隷制、人身売買を含む児童労働を予防し、撲滅する。最悪の形態の児童労働から逃れた人々の意見を尊重し、データに基づいた政策やプログラムを通じて保護を強化する
4.子どもたちが教育を受ける権利を享受できるようにする。無償で質の高い、公平で、包摂的(インクルーシブ)な義務教育・訓練を誰もが利用できるようにする
5.誰もが社会的保護を利用できるようにする
6.児童労働と強制労働をなくすために資金を調達し、国際協力を拡大する
引用元の記事では、農業の現場における労働環境の整備を行うとともに、無償で良質な教育を受ける権利を確保することについて、重点的に述べられています。
実際にこちらの記事によると、今回の会議に出席したナイジェリアの労働雇用大臣であるChris Ngige氏は、同国が児童労働の撲滅を目指した働きとして、中等・高等教育カリキュラムの再構築を通した就職訓練教育の強化、初等・中等教育の無償化や給食プログラムの導入による就学率の増加などの取り組みを、政府が主導となって行っていることを示唆しています。
こちらの別の記事内では、子供たちに無償で教育機会を提供するだけでなく、教師たちのトレーニングを行うことの重要性についても言及されています。児童労働撲滅に対する働きかけとして、児童労働の可能性に最初に気づくことのできる教師に対してアプローチを行っていく必要性があるということです。
いかがでしたでしょうか。アフリカをはじめとして、世界の開発途上国の国々では、未だに多くの子供たちが労働力として働かされ、十分な教育の機会が奪われている現状があります。
国連は毎年6月12日を、児童労働に反対する世界デーとして設定しています。この記事を読まれた方々が一人でも多く、アフリカをはじめとした世界の児童労働問題に目を向けていただけると幸いです。
以下の関連記事では、アフリカの農業、教育に関する記事をいくつかピックアップしているので、興味のある方はそちらもぜひご覧ください。
また、アフリカ進出のご相談がございましたらその下のリンクからお問い合わせください。
参考記事:
1.Global Child Labour Conference agrees Durban Call to Action to end child labour – Link
2.Economic Growth – United Nations Sustainable Development – Link
3.コラム – Vol.