みなさん、こんばんは。
木曜日はアフリカの社会・福祉・humaritarian などに関連するニュースをピックアップしてお届けします。
本日は南アフリカ発のインクルーシブな環境で質の高いキャプションサービスを提供する取り組みについて書かれた記事をご紹介します。
記事:障害者が提供する世界一インクルーシブなキャプションサービス
The world’s most inclusive subtitles and captioning service provided by persons with disabilities
記事リンク:https://www.bizcommunity.com/Article/196/15/208413.html
内容と背景:
本日は、障害のある人だけを雇用する世界初の字幕制作会社について書かれた記事をご紹介します。
南アフリカの字幕制作会社であるThe Sub-Machineは、南アフリカのケープタウンとヨハネスブルグにオフィスを置き、英国のロンドンに代理店を持つ、Waymenel Groupの支社であるThe Human Projectの非営利部門です。
手話を含む南アフリカの全ての言語や、スペイン語・北京語・フランス語などの主要な外国語にも対応し、クローズドキャプション(視聴者側の設定で表示・非表示を切り替えられる)オープンキャプション(一般的な外国語映画などに用いられる字幕)、文字起こし、翻訳など全ての字幕を提供しています。
このThe Sub-Machineは障害のある人だけに雇用を提供する最初の字幕制作会社として2019年から南アフリカでサービス提供を開始したということです。
このサービス提供会社の母体となるWaymenel Groupの創設パートナーはこの記事の中で、映画やプロダクション全般に関わる人々の中に障害のある人が全く含まれていないことに違和感を持っていたと語っています。そこで、このThe Sub-Machineを通して、彼らだけのために仕事を作り出すことに成功しました。それは特に難しいことではなく、例えば車椅子ユーザーにとって、動きやすいワーキングプレイスを作るだけのことだと言います。
優秀なディレクターの車椅子ユーザーの男性は、南アフリカやアフリカの多くの国では、聴覚に障害のある人のための字幕コンテンツは規則ではなく、あくまでもオプションとして扱われていることを問題視していると語っています。それはまるで聴覚に障害のある人が聴衆のメンバーではないかのように、ただそこにいることを忘れられている状態だと述べ、その上で、映画やテレビ番組、CMなど、すべてのメディアコンテンツにキャプションを付ける必要があり、さらに言えば手話もつけるべきだと語っています。
実際にアメリカでは1993 年からアメリカ国内で販売される 13 インチ以上のテレビセットに、字幕を表示できるキャプション・デコーダー の組み込みを義務付け、現在はほぼ100%の字幕が付与されていると言います。
しかし、日本では総務省を中心に視聴覚障害者等向け放送の普及促進に向けた取組みが積極的に進められてはいるものの、字幕の付与はテレビ局の努力義務にとどまり、2015年の総務省の報告によると、NHKで84.8%、民法5局で95.5%、ローカル放送局で69.4%の割合で付与され、CMに至っては花王などの一部の企業をのぞいてほとんどつけられていないことが現状です。
この記事でも言及されているように、南アフリカや他のアフリカ諸国ではこのような字幕に関しての規定はなく、その必要性が広く浸透していないことが考えられます。
The Sub-MachineのHPを見ると、難聴のスタッフもこの事業に関わっているようです。このようなインクルーシブな字幕制作会社としてユニバーサルデザインの視点を持ちながら、字幕のサービスを提供していく傍ら、アフリカの障害者に関連する課題に対して、声を上げていってくれるのではないかと、これからの彼らの活動に期待しています。
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関連・参考記事:
- 総務省 学術雑誌『情報通信政策研究』 第 3 巻第 1 号 米国における視聴覚障害者等向け放送の現状と課題 -Link
- テレビ字幕とアクセシビリティ -Link
- THP The Human Project – Link
- 南アフリカ、公用語に手話の追加を検討【面白記事 Vol. 137: 2020年9月17日配信】- Link